まもなく6月下旬には正式発表となり 7月下旬の大阪セミナーで詳しく紹介されるようです。
7.4 の目玉は複数の IBM i がお互いにミラーリングするという構成が可能になるとのことですが
これはかつての汎用機で広く用いられていた手法です。
大規模ユーザーでは利用を検討するのかも知れません。
IBM i の世界では今年は変革の年になるでしょう。
IBM が発表する IBM i の機能によるものではなく IBM i を取り巻く環境の変化が早く
IBM i の利用方法も変化せざるを得なくなってきているからです。
それは Windows10問題 + Java有償化問題です。
Windows10問題では IBM が iAccessの Windows対応の停止を宣言したために
後継の 5250エミュレータとして Java で開発された ACS (=IBM i Access Client Solutions) を
推奨しましたが、 IBM の予想に反して Java の供給元である Oracle が Java の有償化を宣言し
しかもそのコストがかなり高額になってしまうために問題が顕在化したことです。
それでは IBM i の利用はどのように変わるのでしょうか?
サーバー集中管理化
サーバー、つまり IBM i に管理ソフトウェアや適用業務は集中一括管理の道に
進むことになるでしょう。
元々複数のクライアントに分散して管理していたのは
- IBM i より Windowsクライアントが GUI化に早くから優れていたため
IBM i の GUI化を補完するために Windows を分散として利用していた。 - ところが高価であった Windows クライアントも安価で普及するようになると
社内の保有台数が増え、これらすべてにクライアント・モジュールを
配布して管理するとなると手間と導入コストが逆に増えてしまった。 - GUI化が遅れていた IBM i も Web化や Webフェーシングなどによって
十分 GUI化 Web化ができるようになったので分散している意味がなくなった。 - 分散型は配布や管理の手間が多く、クライアント数の増加によって
コストも増加してしまう。 - 分散型は今回の Windows10問題でもわかるように 4年に一度の Windows の
バージョン・アップに伴って問題が発生する危険性をはらんでいる。 - クライアント・モジュールの Java化は解決にはならないことが
今回の Java有償化問題で明確になった。
分散化はやめてサーバーを一極集中型にしないと真の問題の解決はできない。
これまで分散化として運用されていたお客様もサーバー集中型へ徐々に
移行される方向になるでしょう。
IBM i オープン化には、印刷のオープン化が課題
サーバー集中管理が求められる中で問題が顕在化してきたのが印刷のサーバー集中管理化です。
これまで対話型の適用業務では様々なソリューションが発表されて
Web化 GUI化が進んできました。
しかし印刷の集中化となるとまだ完全ではありません。
IBM i からクライアントへ印刷を出力しようとすると、始めは PDF の配布が
試みられましたが PDF の配布による印刷は
- PDF配布はプリンター印刷出力のように単純な操作ではなく
PDF化の複雑な操作を伴うものが多い。 - 自動 PDF化には IBM i 側のプログラムへの追加や変更が必要である。
- PDF対応プリンターしか印刷できないので単純なプリンターには印刷できない。
の問題があり PDF印刷は特定の業務に限られていました。
次に候補に挙がったのは LPR/LPD印刷です。
Windows には LPD が導入されていますので、設定さえ変えれば IBM i から LPR を使って
スプールを Windows に投げてやれば簡単に印刷することができました。
多くの印刷業務は LPR/LPD印刷によって解決できたかに見えました。
しかし LPR/LPD でも次のような問題があります。
・Windows側の LPD は Windows のプリンター・ドライバーを使うのではなく
省略時のプリンターにLPDで受け取った印刷スプールをそのままで投げる手法である。
- プリンターで LPD や PDF解釈の能力が必要である。
- Windows のプリンター・ドライバーを使わないので Windows で印刷の制御や
プレビュー、用紙設定などの細かな制御を行うことができない。
弊社では IPP印刷プロトコルのサポートによって複合機に対して
直接、両面印刷や用紙方向、トレイ指定などを行えるようにしていますが
これも LPR/LPD によるものであり Windows のプリンター・ドライバーは
使っていません。
国内の多くの印刷ソリューションは「複合機にも印刷できます」とうたっていますが
これは正確には「印刷できる複合機もあります」と述べるべきです。
すべての複合機に印刷できるわけではないからです。
ある一定の条件を満たす印刷が可能になる複合機もあります、というのが
正しい表現です。
特にプリンター・セッションとして利用されているものには Canon製の複合機が
多いのですが Canon のプリンターは LPD に対応していても PDF印刷には対応していない
ものが多いので PDFを印刷するソリューションでは印刷ができません。
Canon は LIPS と呼ばれる独自の印刷ファイル形式であるので
単に LPR/LPD で転送したのでは印刷できないのです。
LPR/LPD + PDF印刷が印刷の必要な条件であり LPR/LPD を使ったからと
言ってもすべての複合機に印刷できるわけではありません。
IBM i のオープン化とは ?
そこで根本的な解決のためには IBM i のオープン化がどうしても必要になってきます。
IBM i のオープン化とは IBM i自身が Windows とシームレスに結合できること。
つまりIBM i が自然な形で Windowsプラットフォームのひとつのクライアントとして
振舞えるようになることです。
IBM i が Windows とシームレスな通信が可能となれば IBM i は Windowsプラットフォームを
ターゲットとして開発されてきた数多くのデバイスを Windows のクライアントの一員として
利用することができるようになります。
/QNTC (=NetWork Client) では Windows の共有ファイルを
利用することはできるようになりましたが、Windows のデバイス (装置つまりプリンターなどの
Windows に接続可能な入出力機器) を利用することはできていません。
これは技術的には可能なのですが Windows共有デバイスを利用可能にしてしまうと
高価な 5577系プリンターが売れなくなってしまうので IBM としては
戦略的に提供しなかったのだろうと推測されます。
また IBM i と Windows が単に双方向に通信できる、ということでは
シームレスな結合であるとは言えません。
Windows に IBM i と通信できるモジュールを導入するのでは大量の配布が必要となり
時代を逆行することになるからです。
☆IBM の考えるオープン化と
ユーザーの希望するオープン化は逆である
IBM i の周辺機器 | Windows の周辺機器 | |
---|---|---|
メーカー | IBM のみ | 多くのメーカーがある |
種類 | IBM 提供に限定 | 多種多様な種類がある |
値段 | 高価 | 価格競争があるので安価 |
オープン化 | IBMの考えるオープン化 | ユーザーが求めるオープン化 |
これが戦略的な理由からのものであれば、今後も IBM i から Windowsデバイスを利用する手段は
なくなってしまいます。IBM は IBM 自身による IBM i のオープン化には否定的です。
しかし LPR/LPD や IPP によって IBM i のオープン化を進めてきた弊社にとっては
オープン化は後戻りのできない進むべき道です。
LPR/LPD や IPP だけではラベル・プリンターなどの Windowsプリンター・ドライバーを
使用している単純なプリンターのサーバー化ができなくなってしまうからです。
やはり Windows のプリンター・ドライバーをサーバー・サイド (IBM i) 側から印刷指示する
仕組みが必要となってくるのです。
Windows のプリンターを共有にしてそこに IBM i から印刷指示を送るようにするには
( しかも現在の iAccess などによる印刷セッションをそのまま利用するには)
- 仮想印刷 TELNETクライアントの作成(仮想印刷 API)
- IBM i の印刷ストリームを Windows用の印刷ストリームへ変換する
- Windows の共有デバイスに IBM i が通信できるようにする
を IBM i 上で実現しなければなりません。
これは高度な技術をいくつも必要としますが実現できれば日本国内の IBMユーザーにとって
大きな利益になります。
現在、㈱オフィスクアトロでは分散してこの技術の実現を目指して
急ピッチで研究開発を進めています。
まず仮想プリンター TELNET接続には API が用意されていませんが
IBM ユーザーは現在の構成をそのまま利用することを望みますので
仮想プリンター API の開発が必要となります。
次に Windows プリンターへのスプールの出力は MS-EMF形式で出力されていますので
IBM i のスプールの形式である SCS を EMF へ変換しなければなりません。
Windowsプリンターは Microsoft が用意した EMF という形式のスプールを
自分自身の出力形式に翻訳して印刷出力します。
つまり EMF形式であればプリンターの仕様に依存することなく印刷が可能となります。
このような中間形式のファイルのことをメタ・ファイルと呼びますが
MS-EMF (=Enhanced MetaFile) は文字通り強化されたメタ・ファイルなのです。
そして Windows の共有プリンターへは Microsoft の SMB (=Server Message Block)
プロトコルで送信しなければなりません。
「共有」ということは Windows の PORT 445番で待機している SMB サーバーと通信ができる
ということなのです。
IBM i のオープン化にはこのように三つの困難な問題を克服しなければなりません。
しかし
IBM i をオープン化することは
IBMユーザーにとっての大きな利益に繋がります。
Java の費用支払いも発生することなく従来の印刷装置をそのまま利用できて
さらには Windows のどのようなデバイスでも IBM i から使用可能になるからです。
Windows のバージョン・アップへの追随を気にするどころか逆に
Windows を大いに利用することができるようになるのです。
これは 5250ハンドラーによって 80*24 の画面制約を打ち破ったあの革命に続く
大きな歴史的なイノベーションです。
簡単に言えば Windows のすべての端末が IBM i の端末にもなることに
なるということです。
数百台、数千台の Windows クライアントがすべて IBM i の端末としても
使えることになるのです。
Windows のために開発されたすべての機器は IBM i でも使用可能になると
いうことです。
技術は大きな革新を生みます。
今年は IBM i のオープン化の波が生まれることを期待しております。
そして時代が IBM i のオープン化を望んでいます。
問題視された Windows10問題や Java有償化問題ですが
IBM i の新しいうねりを生む機会となることは間違いありません。
令和の時代はIBM i をとりまく環境の変化に対応していかなければならない時代を
迎えています。
今日のこのアナウンスは遅くなりましたが、弊社で実現可能である目処が出てくるまで
アナウンスできませんでした。
ようやく研究開発の途上で基礎技術に確立に成功しましたので、ここに発表するに至りました。
それほど今回の開発は今までの技術の蓄積を持ってしてもやさしくはない課題でした。
しかし㈱オフィスクアトロは技術を持ってお客様のこの難問を解決していく所存です。
次の発表を期待してお待ちください。